DMCシリーズ:登場人物の名前が示す意味

DMCシリーズにおける、登場人物の名前の持つ意味が気になったので調べてみました。 ここで言う「名前の意味」とは、ダンテはイタリアの詩人ダンテ・アリギエーリから、バージルは詩人ダンテの「神曲」に登場し、古代ローマ時代に実在した詩人、プブリウス・ウェルギリウスから･･･といった名前の「由来」ではなく、名前そのものが持つ「意味」を指します。

人名の語源・意味は割と諸説があったりするので少し曖昧なものもありますが、概ね以下の通りになりました。

DMCシリーズ：登場人物の名前が示す意味

ダンテ [Dante]

イタリア系の人名”Durante”の短縮系。 “Durante”はさらにラテン系の人名”Durantis”、「我慢強い、不朽の」という意味を持つ”Durand”を由来とする。 現代英語に直すと”enduring”,”steadfast”といった単語に置き換えられ、「永続的な 、不動の、(信念などが)曲がらない」などの意味を持つ。

バージル [Vergil]

ラテン系のウェルギリウス(Vergilius)を由来とした英語風短縮系の名前。 「栄える、繁盛する、盛大な」といった意味を持つ。

ネロ [Nero]

ロマン名の場合は、そのままで「黒」を意味し、イタリア名の場合は”Raniero”の省略変化形の場合がある。 “Raniero”はさらにドイツ名”Raynor/Rayner”を由来とし、その原型は古ドイツ名”Raginhari/Raginhar”。 この名は”ragin”(=相談・助言)と”hari”(=軍隊・戦士)から成る。併せて「賢い戦士」という意味になる。

トリッシュ [Trish]

公式ではベアトリーチェを短縮した名前とされているが、一般的に”Trish”という人名は英”Trisha”の変化形でさらに”Trisha”は”Patricia”由来である。 意味は「貴族、高貴な血統の」。ちなみにベアトリーチェ(Beatrice)は「(人生をかけた)旅人、航海者」という意味を持つ。

ルシア [Lucia]

ローマ・ラテン系の”Lucius/Lucia”を由来とする人名。ラテン語”lux”を語源とする。意味は「光」。

スパーダ [Sparda/Spada]

イタリア語で「剣」という意味。ラテン語の”Spatha”「木、または金属製の幅広い刃」に由来し、 さらにその語源は”Spatha”「仏炎苞(棒状の花を包み込む苞)」である。 一般的には、刃渡り75cm～1m程の剣を指す。人名には殆ど使用されないと思われる。
※ゲームにおいては、元々”Spada”だったのを発音しやすくするため”Sparda”に変更したとの事ですので、 元となった”Spada”について調べた結果です

エヴァ [Eva]

ヘブライ語の”Chavvah”のギリシャ形で、現代英語では”Life”となる。「生命」「人生」を意味する。 聖書においては、女性の最初の名前であり、全ての人類の母であるとされる。
また人名”Eva”はアイルランド系ゲール語の”Aoife”由来とする説もあり、「美しい人」「美貌」を意味するとされている。

アーカム [Arkham]

小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品に登場する架空都市の名前。 一般的に人名には使用されない。 ただし、アメリカンコミックの『バットマン』には、ラヴクラフト作品の影響を受けて考案されたという「アーカム・アサイラム精神病院」が存在し、 その創設者の名前はアマデウス・アーカムである。
また、関連性は疑わしいが、Arkは「箱舟」という意味を持ち、その語源はラテン語で「入れ物」という意味である。 さらに、旧約聖書に登場する人物であり、「Noah’s Ark(ノアの箱舟)」を建造した聖人ノアの次男の名は”Ham”である。 “Ham”はヘブライ語の”Cham”を英語読みしたものである。語源である”Cham”は「黒さ」「熱さ」を意味する。

キリエ [Kyrie]

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『ミサ曲ロ短調(BWV 232)”kyrie”』より。 一般的には人名に使用される言葉ではない。 ギリシア語で「主」という意味を持つ”kyrios”の呼格(呼びかけの形)で、「主よ」という意味。

グロリア [Gloria]

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『ミサ曲ロ短調(BWV 232)”Gloria”』より。 ラテン語のGloriaに由来。「栄光」を意味する。 英語では”Glory”で、同じく「栄光」や「誉れ」、「栄華」「栄誉」といった意味を持つ。

クレド [Credo]

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『ミサ曲ロ短調(BWV 232)”Symbolum Nicenum”(ニカイヤ信条)』より。”Credo”はその省略形であり、別称。 一般的には人名に使用される言葉ではない。 ラテン語の”Credo”が由来で、「私は信じる」という意味。 現代英語他、あらゆる言語で「信条」という意味がある。

アグナス [Agnus]

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『ミサ曲ロ短調(BWV 232)”Sanctus, Hosanna, Benedictus, and Agnus Dei”』より。 “Agnus”はラテン語で「子羊」を意味する。 人名としての”Agnus”は、女性名”Agnes”から派生した名前。 “Agnes”は古代ギリシャ語”agnós”を由来とする名前である。 現代英語に直すと”chaste”となり、肉体的に「純潔な、処女の」、 思想的・人格的に「上品な、純粋な、純正な」 という意味がある。

サンクトゥス [Sanctus]

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『ミサ曲ロ短調(BWV 232)”Sanctus, Hosanna, Benedictus, and Agnus Dei”』より。 一般的には人名に使用される言葉ではない。 ただしSanctusから派生するラテン系の人名”Sanctius”がある。 ラテン語の”Sanctus”由来で、現代英語に直すと”Sacred”となる。 「神聖な」「聖なる」といった意味がある。

アリウス [Arius]

古代ギリシャ起源の人名。Athanasius(またはAthanasios)の変化形である。 その語源は古代ギリシャ語”θἁνατος”(death)であり、転じて現代では”undying”や”immortal”といった意味を持つ。 和訳すると「不死(身)の」「不朽の；不滅の」「不変の」。

ネロ・アンジェロ [Nelo Angelo]

ネロアンジェロは公式表記でのスペルが”Nelo Angelo”となっているが、スペルミスの可能性もある。 ダンテ・アリギエーリの『神曲』の中では、”Angelo Nero”(黒い天使、闇の天使)と表記されている。 ただし”Nelo”にも由来があり、ヘブライ語起源のスペイン系の名前で、その意味は「神は我らと共にある」 。

いかがでしょうか？キャラクターが誕生した際、どの程度まで考えて名づけられたのかは定かではありませんが、 成る程と納得できるものが多かったのではないかと思います。 調べ始める前は全然意味が通らないんだろうな、と思っていたのですが、予想に反して大半のキャラクターが名前の通りの人物と思えたのでかなり驚きました。

個人的に特に印象的だったのはダンテの「永続的な 、不動の、(信念などが)曲がらない」、ルシアの「光」、ミサ曲ロ短調由来の五人などでした。ストーリーを考えると、ルシアっていい名前つけてもらったなぁ･･･とつくづく思います。

以下、簡素な説明になりますがおまけで調べた名前です。

トニー・レッドグレイヴ [Tony Redgrave]

“Tony”は”Anthony”の短縮形で、意味は「計りしれないほど貴重な」 。 レッドグレイヴ(Redgrave)は古代英語の”hreod”と”graef”が起源。 現代英語に直すと”reed”と”ditch”になる。それぞれ「(植物の)アシ」と「堀、水路」。 直訳の「赤い墓」は無関係と思われる。

ニール [Neal,Neil]

“Neal”,”Neil”共にゲール人名”Niall”に由来し、さらに”Niall”は古アイルランド語”Niul”に由来する。さらに、”Niul”は「闘士」「優勝者」を意味する単語”niadh”が語源とされている。主に男性名である。

カリーナ [Kalina]

スラヴ語起源では”flower”(花)、 オーストラリア先住民Wemba-Wemba族の言葉では”to love”(愛すること)、 また、ゲール語を起源とする人名”colleen”(語源：”cailín”)をハワイ語形式にした名で、その場合は”girl”,”little girl”(少女,若い女の子) …などなど多岐に渡る。（「カリーナ」は、”Kalina”よりも”Karina”もしくは”Carina”の方が人名としては一般的）